東京地方裁判所 昭和41年(ワ)3256号 判決
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〔判決理由〕二、そこで、被告会社の責任について判断する。被告会社が旅客運送業を営み、事故当時被告永井を運転手として雇用していたことは、被告会社と原告らとの間で争いがない。<証拠略>によると、被告永井は、被告会社に昭和三七年三月に雇われ、同社高崎営業所において、定期バスの運転手をしていたが、自宅と営業所の通勤距離が約七粁位ありかつ出勤時刻が早いときには午前六時ころであつたため、仕事の便宜をも考えたうえ、当初の自転車での通勤(約四〇分位かかる)を止めて、昭和三九年一二月からその頃購入した被告車によつて通勤していたが、通勤車使用につき被告会社の了承を受けたことはなかつたこと、本件事故当日、被告永井は、被告会社高崎営業所の従業員労働組合によつて主催された新年宴会に出席し飲食したうえ、帰宅途中に本件事故を起していること、被告永井は被告車を通勤以外に使用することはなかつたことなどの事実が認められ、これに反する立証はない。
以上の認定事実によると、被告永井としては、被告車をもつぱら自己の通勤のためにのみ使用していたところ、当時従業員組合主催の新年宴会からの帰宅途中本件事故を起したというのであつて、本件は被告永井が自己所有車により通勤(帰宅を含む)途中の事故ということができる。ところで、被用者が雇用先の事業所などに通勤する行為は、使用者に対する労務提供のための準備行為として、間接的には使用者の利益になるとも考えられるけれども、反面通勤中はもはや使用者の指揮命令による支配を離脱し、全く被用者の自由な活動範囲に属するものであるから、被用者の通勤車利用行為をもつて、使用者のための自動車の運行ないし業務執行と言うことは困難である。従つて、使用者が被用者所有の自動車を事故当時業務執行に利用していたとか、或は客観的外形的ないし一般的抽象的にみて、事故時の運行行為が使用者のための運行ないし業務執行と解し得るような特別事情のある場合は格別、一般的には被用者の通勤車使用中の事故につき使用者が自動車損害賠償保障法三条ないし民法七一五条に基づく責任を負わないものと解するのが相当である。本件についてこれを見るに、前示認定事実からは右の特別事情の存在を認めるに由なく、被告会社の運行供用者ないし使用者としての責任は、これを認めることができない。(安田実)